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神戸地方裁判所 昭和63年(わ)562号 判決

本籍

兵庫県西宮市津門大箇町九一番地

住居

同県同市津門大箇町九番一一号

後呂和裁学院学院長

後呂敏雄

大正七年八月五日生

本籍

兵庫県西宮市津門大箇町九一番地

住居

同県同市津門大箇町一〇番二七号

後呂和裁学院理事長

後呂保博

昭和一九年四月一八日生

右の者に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官篠崎和人出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人後呂敏雄を罰金一八〇〇万円に、被告人後呂保博を懲役一年に処する。

被告人後呂敏雄においてその罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人後呂保博に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人後呂敏雄は、兵庫県西宮市津門大箇町九番一一号ほか三か所において後呂和裁学院の名称で和裁学校及び和服仕立業を営むもの、被告人後呂保博は、右後呂和裁学院の経理事務全般を統括しているものであるが、被告人後呂保博は被告人後呂敏雄の業務に関し、その所得税を免れようと企て、

第一  昭和五九年分の総所得金額は五七九八万四一〇一円で、これに対する所得税額は二八八二万三九〇〇円であるにもかかわらず、雑収入の一部を除外するなどの方法で、その総所得金額のうち四六二二万九〇四〇円を秘匿した上、昭和六〇年三月一三日、兵庫県西宮市江上町三番三五号所在の所轄西宮税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が一一七五万五〇六一円で、これに対する所得税額が二八六万九三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二八八二万三九〇〇円との差額二五九五万四六〇〇円を免れ

第二  昭和六〇年分の総所得金額は六三二七万二七五九円で、これに対する所得税額は三一一三万二四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その総所得金額のうち五一七五万一四二五円を秘匿した上、昭和六一年三月一二日、前記西宮税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が一一五二万一三三四円で、これに対する所得税額が二五六万七七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三一一三万二四〇〇円との差額二八五六万四七〇〇円を免れ

第三  昭和六一年分の総所得金額は七四九二万二四七〇円で、これに対する所得税額は三九九七万二二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その総所得金額のうち五一一四万九三八七円を秘匿した上、昭和六二年三月一三日、前記西宮税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が二三七七万三〇八三円で、これに対する所得税額が八七六万一五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三九九七万二二〇〇円との差額三一二一万〇七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人両名の当公判廷における各供述

一  被告人後呂敏雄の検察官に対する各供述調書及び大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人後呂保博の検察官に対する各供述調書及び大蔵事務官に対する各質問てん末書並びに同被告人作成の「上申書」と題する書面

一  安部みどり(三通)、松野理恵、後呂洋子、後呂礼子、後呂敏和及び小林悦子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第二号)及び証明書(検第五号)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第三号)及び証明書(検第六号)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第四号)及び証明書(検第七号)

(法令の適用)

被告人後呂敏雄の判示各所為はいずれも所得税法二四四条一項(業務主として)、二三八条一項に該当するところ、いずれも情状により同法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金一八〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

被告人後呂保博の判示各所為はいずれも所得税法二四四条一項(従業者として)、二三八条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡田信)

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